
オペラなどで繰り返し愛され続けている、19世紀のフランスの小説「椿姫」。
タイトルを聞いたことがあっても、オペラを見に行くわけでもないし、実は内容を知らない…という方のために、今回は椿姫の小説のあらすじを紹介いたします。
ネタバレの内容もあるので、見たくない方はここまでですよ!
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- 読んだ後の満足感:
(5 / 5)
- 読むのにかかった時間:120分
椿姫の作者
「椿姫」の作者はデュマ・フィス。「フィス」とはフランス語で「息子」という意味で、「デュマの息子」と呼ばれる作家さんです。「デュマ」とは、「モンテクリスト伯」や「三銃士」を生み出した文豪「アレクサンドル・デュマ」の事。
椿姫の作者は、かの有名なアレクサンドルデュマが、愛人に産ませた実子なのです。
そしてデュマフィスは、実体験に基づいて「椿姫」を描いたと言われております。
- 主人公アルマン…デュマ・フィス自身
- ヒロイン・マルグリット…実在するマルグリット・デュプレシという高級娼婦
「椿姫」が演劇やオペラで愛され続けているのは、真実に基づいたリアルの人間描写に感動があるからです。当時フランス文学では、事実に基づいたこのような小説仕立ての作品は珍しく、世界中に名をとどろかすまでに至ったのですよね。
椿姫の登場人物
- マルグリット・ゴーティエ
パリで一番の美人と言われる高級娼婦。いくにんもの男性に金銭的支援を受けているものの、お金がなく情熱的で嫉妬深いアルマンに恋に落ちてしまう…。アルマンとの蜜月の後も、高級娼婦として男性に金銭を融通してもらう暮らしから抜け出せずにいる。心が優しく恋人というよりはお姉さん的な愛情をアルマンに注ぎ続けるが、彼を愛するあまりに自分を犠牲にする決断をしてしまう、不遇の女性。 - アルマン
田舎出身の熱意溢れる24歳の男性で、マルグリットを一目見て恋に落ちる。情熱的な愛をマルグリットに寄せ続けるが、思いつめやすい性格で嫉妬深くわがままな面もある。マルグリットを愛するあまりに彼女の生活の核心にあまりにも触れすぎ、やがて嫉妬からくる残酷な内面を見せ始める。 - プリュダンス
かつて娼婦として商売をし、加齢により仕事ができなくなったためにマルグリットの付き人として、甘い汁を吸い続ける。アルマンに好意的ではあるが、基本的に利己主義で自分の収入のことを第一に考える女性。 - G伯爵
マルグリットの愛人の一人。経済的に裕福で、マルグリットの家や金品の世話をし続ける。アルマンの嫉妬の対象となる。 - N公爵
高齢の紳士で、マルグリットを娘のように愛し続けるが、愛人かプラトニックかの線引きがあいまいに描かれている。アルマンの嫉妬の対象となる。マルグリッドの高額な出費を全て負担し続けてくれるが、アルマンとの仲を知ってマルグリッドから去る。 - アルマンの父
田舎の真摯で誠実な人物。娼婦に入れあげて息子が道を間違えることを、ただただ心配している。アルマンのほかに、娘も1人いる。 - わたし
物語の聞き手として
椿姫のあらすじ
物語は、ある男性が偶然パリ市街のラフィット街で、ある死んだ女性の物品を競売にかけるチラシを見たところから始まります。男性は競売にかけられる品が、つい最近まで「フランス一の美女」と呼ばれていた娼婦のマルグリット・ゴーティエのものだとしり、興味を持ちます。
そして、競売で落とした1冊の本が原因で、マルグリットをめぐる悲しい物語を聞かされることになるのです。
亡くなった娼婦のマルグリットはパリで1番の美女。多くのお金持ちの男性から支援を受けて、快楽におぼれた生活をしていました。
しかし一人の情熱的な青年、アルマンと恋に落ちて変わります。
アルマンの一途すぎるマルグリットへの想いは、何度も何度も嫉妬や疑心暗鬼で行き過ぎて、やがてマルグリットを死に追いやるほど追い詰めてしまいます…。
椿姫の見どころポイント
なぜ椿姫がこんなに高い評価を受け、世界中で何度も映画や舞台で上演され続けるのか?作者のデュマフィスは、自分が愛人の息子として「母の苦労」と「私生児の苦悩」をみて育ちました。それゆえに彼の作品は「金銭的に裕福で利己的な男性」が「娼婦のような社会的弱者」の人生をいとも簡単に破滅に導く不平等さを問題提議しているのです。
それは19世紀のフランスのみならず、今でも経済格差に苦しむ多くの人の心を打つんです。
19世紀のパリの娼婦の悲惨な状況
マルグリットという実在の高級娼婦をモデルにした人物を主人公にしたことで、「19世紀パリの高級娼婦がどのような生活をしていたのか」が赤裸々に描き出されることが、より作品にリアリティを与えています。
「もしも贅沢におぼれきった女性が、純愛に出会ったらどのように行動するか?」が、ものすごくリアルに描かれているんですよ!
アルマンの方はただただ「好きになった女性を独占したいのにできなくてイラだつ若者」という感じで、終始「熱におかされた」感じがしているんですが…マルグリットは違います。
「娼婦の自分」と「アルマンを愛する自分」をすり合わせるも、ことあるごとにアルマンの疑心暗鬼にさらされて、そのたびに傷つけられ苦悩する様子が、痛々しいほどに描かれます。
マルグリットはまだいい。こうして純愛に1度でも身を投げ出すことができたのだから。しかし当時のパリでは多くの女性が、愛を受けることもなく「商品」としてぞんざいに扱われてきたのでは?と嫌でも想像してしまいます。
当時のパリでは娼婦の中でも一番恵まれていたマルグリッドですら、この境遇です。他の貧しい女たちの生きざまを、いやでも想像させられますよね。
マルグリッドの病気
マルグリッドは「肺を悪くした」とか「咳が止まらない」「喀血」という描写で作中でずっと肺を患っています。結核の症状と似ていますが、はっきり結核とは書いておらず「母から受け継いだもの」と書かれています。
アルマンの病気
マルグリッドの死後、病床についたアルマンももしや彼女の病気がうつった?と思うのですが、違います。アルマンは「悩みすぎて脳炎になった」と表現があり、実際の病気というよりは、心のダメージの大きさからくる憂鬱のような感じです。
墓をほりおこす行動
物語冒頭に、アルマンがマルグリッドの墓をあばくシーンがありますが、その理由が「あんなに美しかった人を神様がどんなふうに変えたのかを見届けなくてはならない。変わり果てた姿を見たら、悲しい自分の気持ちも消えるかもしれない」という物です…。
そ、そんな理由で墓を暴かれる「美しさ」が唯一の生きるすべだった女性の気持ちを考えてほしい…って思いました。「見にくくなった姿を見たら、自分の気持ちも消えるだろう」って理由でアルマンは、マルグリッドの疎遠の家族のところにまで行って墓暴きを頼むんですよ。
マルグリッドに会った当初からストーカー的に付きまとい、付き合っている間も嫉妬と疑心暗鬼を繰り返しながらも、金銭的な支えをN公爵に委ね続け、別れた後は彼女にひどい仕打ちをして、死んだら苦しみから解放されるために「醜い姿を見たい」とは…。
わたしはアルマンが最初から最後まで好きになれませんでしたが、いつの時代も「愛されて育った」男性に共通する、自分本位だけで存在する性質が見て取れます。
父親の存在
また、椿姫にはアルマンの父親が登場しますが、椿姫というお話自体、「作者のデュマ・フィスがアルマンのモデル」と言われている作品なので、その「父親」となると、いやでも「アレクサンドル・デュマ」を想像してしまうんです。
実際にアレクサンドルデュマが息子のために一肌脱いだ、という事実があるわけではないけど(不明)わたしはそれはないと思います。
アレクサンドルデュマは、愛人(おそらく娼婦)に子どもを産ませ、その子(デュマ・フィス)は悲惨な母の境遇を見て育ったために、父に離反していたと言われているからです。
アレクサンドル・デュマの方も息子の作品を「説明が多すぎる」と批判的な意見を言っており、父子の関係はそれほど良くなかった印象があります。
だからこそ、実際にアレクサンドルデュマが、娼婦に熱を上げる息子の将来を心配したのかも?なんて想像してしまいますが…(笑)。
エロスの表現がほぼない
椿姫は、小説自体にはエロスの表現が一切ありません。「夜を過ごした」とか「部屋に入った」「愛撫をした」というサラッとした表現でのみ書かれているので、実際にアルマンとマルグリットが結ばれた時期がよくわからないんです。
3回目にマルグリットに会ったときにすでにベッドインしているのかとも思えるし、一方で、田舎に旅行に行った時も常にプリュダンスがそばにいるため、「ひょっとしてまだベッドインしてない?」とも思えてくるんです。
直接的な描写がないのでわかりませんが、オペラや映画ではその作品単体の解釈で描かれています。
こうして2人の関係の進行度を出さないことでかえって、想像力を掻き立てられるんですよね。
椿姫を小説以外で簡単に見るには?
オペラでは繰り返し上演されている椿姫ですが、実は映画は古いものばかり。動画で作品を見るのは、難しいかもしれませんね。
ミュシャの椿姫
画家のミュシャが椿姫のマルグリットを描いています。美しさの中にゆらぎがある、素晴らしい1枚で、小説のカバーになっています。
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ユーネクストで1988年に公開された松坂慶子さん主演の椿姫を見ることができます。私は見たことがないのだけど、日本語なので自宅で内容を把握するために見やすい内容と言えるでしょう。
グレタ・ガルボの椿姫
1930年代にグレタ・ガルボが主演した映画の「椿姫」は当時アカデミー賞に複数選ばれるなど好評でした。歴代の名作なので、見る価値はあります。
ソフィア・コッポラの椿姫
2017年に、「ヴァージンスーサイズ」で一躍有名になったソフィアコッポラが「椿姫」のオペラ作品を手がけました。オペラなので日本での公演機会がない限り見ることができませんが…個人的には一番見たい内容です。ソフィアならばマルグリットの揺らぐ気持ちを見事に再現してくれそうじゃないですか?
まとめ
マルグリッドの悲劇は、わかりやすいです。「マルグリッド自身にも非があった。アルマンが好きなら他の男性からの資金援助を断ればいい」という評価も、特に男性からすれば一般的なものだと思います。
けど、私は女性なので、なんとなくわかります。
「愛するアルマンだからこそ、金銭的負担(それも多額の借金)の肩代わりをさせたくない」
「愛するアルマンだからこそ、あえて【ひどい女】を演じて、嫌われるように仕向けよう」
愛するからこそ、守りたいものが、マルグリッドの方でもあったんだと感じるんです。自分自身の贅沢におぼれ切った怠惰な生活のつけ(借金)を、愛する男性におわせたくないという「男前なプライド」が、マルグリッドの美学なんです。マルグリッドの中には「母のような凛とした誇り」があり、それにもたれ切り、振り回すアルマンのわがまま小僧っぷりが切なくなります。
そして、いつの時代もどんな年代の男性も、多くの場合は女性が払うその代償に気が付いてくれないんですよね…。
心は確かに傷つき、救いのない小説に思えますが、一生で1度は読む価値のある名作です。