19世紀イギリスの名作「ジェーン・エア」は、名作には珍しく「不美人」と「ブ男」のラブストーリー(って当時の新聞に書かれていたんです!きついいい方ですみません)。
主人公のジェーン・エアは作中で何度も「不美人」の描写があり、本人もそのことを気に病んでますが、日々堅実に生きる心の清さが幸せへと導いてくれます。
そしてジェーンの地味な見た目ではなく、心の誠実さと「ひねくれ感」をまっすぐに愛してくれるロチェスター氏の、これまたひねくれた愛情が何とも言えず「萌え」なんです!
2020年に読んでも「面白い!」とのめり込んで夢中になれる名作について、以下にまとめてみたのでご覧ください。
※作品のネタバレを含むのでご注意くださいね。
- 面白さ: (5 / 5)
- 読みやすさ: (4.5 / 5)
- 導入の引きこみ: (4 / 5)
- 読んだ後の満足感: (5 / 5)
- 読むのにかかった時間:200分(2冊で)
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作者シャーロット・ブロンテについて
実はこのジェーン・エアを書いているシャーロット・ブロンテは「嵐が丘」を書いているエミリー・ブロンテのお姉さんです。更にもう一人の妹アン・ブロンテとともに、今でこそ著名作姉妹として知られていますが、度重なる不遇から姉妹は早世。シャーロットも38歳の時に亡くなっています。
シャーロットが幼い時に入った寄宿学校は環境が劣悪で、幼い2人の姉を亡くしました。シャーロットはこの時の学校を、「ジェーン・エア」の中のローウッドのモデルにしたと言われています。
嵐が丘とジェーン・エア、両方の作品に共通するのは19世紀イギリス地方部の殺伐とした田園風景。ヒースの咲き誇る広大な大地の寒々しい描写が、登場人物の孤独とつながりを浮き彫りにするのです。
ジェーン・エア、登場人物
- ジェーン・エア
:物語の主人公
:美人でなく真面目で勤勉で努力家
:赤ん坊のころ両親を亡くし、義理の母の家で差別され虐待を受けて育つ
:女性でも一人で身を立てて生きる、当時の女性としては社会への反骨精神を主軸に生きる自立した女性
:皮肉屋でひねくれものだけど、常に自分に正直に生きる - リード婦人
:ジェーンの叔父の妻。叔父の遺言で赤ん坊のジェーンを引き取り育てる
:反抗的なジェーンに度々虐待を繰り返し、ついには劣悪な寄宿学校ローウッドへと追いやる - エリザとジョージアナとジョン
:ジェーンのいとこたちだが、意地悪で暴力的でジェーンに無関心 - ベッシィ
:リード婦人の屋敷の召使い
:冷たい屋敷の人々の中で唯一、ジェーンに愛情らしきものを注いでくれた若い女性
:ローウッドを卒業する時や、叔母の死ぬときにジェーンに知らせをよこしてくれる - ヘレン
:ローウッドでできた魂からの親友。
:ローウッドの劣悪な環境があだして、肺炎で亡くなってしまう。
:作者のシャーロットブロンテの姉のマリアがモデルとなっている。 - アデル
:ジェーンが大人になり務めた先の家庭教師の生徒。
:フランス人の娼婦の娘だが、父親代わりのロチェスター氏に引き取られ裕福に成長する - ダイアナとメアリー
:ジェーンのいとこ。成人してから出会う。 - セント・ジョン
:ジェーンのいとこでダイアナとメアリーの兄。
:真面目で誠実で自分に厳しくストイックにジェーンを縛り付ける - ロチェスター
:ジェーンが家庭教師として勤めた屋敷の主人。
:ハンサムではないが、たくましく精悍で、ジェーン同様にひねくれものの変わり者。
ジェーン・エア、あらすじネタバレ!
赤ん坊の時に両親を亡くしたジェーン・エアは、母の兄の妻・リード婦人の家で奴隷のように恵まれない子供時代を過ごします。愛情を与えられず、度重なるいとこからの暴力に耐えかね反抗するが、叔母のリードはせっかんを繰り返すのみ。
あるとき伯母からの暴力が明るみに出て、ローウッドという遠くの寄宿学校に入れられてしまいます…。
ローウッドでは学長が寄付金をけちり、劣悪な環境で生徒が病気や飢餓で次々と亡くなっていました。せっかくできた友も死に、何とかジェーンは生き延びて、その学校で勉学を学び教師となります。
卒業後、あるお金持ちの家に、家庭教師として住み込みで働くことになりますが、主人のロチェスターは変わり者の偏屈男。
屋敷の中には奇妙な物音が鳴り響き、怪しい召使いがうろつく謎があります。
あるときロチェスターの屋敷に、ジェーン宛に「リード叔母の臨終が近い」という知らせが届きます。自分を虐待した伯母でも身内…ジェーンは暇をもらって伯母の家にいきます。臨終の間際に伯母は、ジェーンには父方の裕福な叔父がいることを聞かされますが、叔父はすでに外国に行き連絡はとれなくなっていました。
叔母の死後、実の叔父を探す当てもなく、再びロチェスターの屋敷に戻りました。
家庭教師の仕事を真面目にこなすジェーンに、館の主人のロチェスター氏が興味を抱き、接近してきます。お互いにひねくれもので不美人とブ男。(原作でしばしばそう書かれているんです!嫌ないい方ですみません)魂が共鳴し合うようにジェーンもロチェスターに惹かれていきますが、そこに立ちはだかるのは身分の違いと、ロチェスターの抱える大きな秘密でした…!
思い合う2人の恋の結末は、思いもよらない悲劇に導かれます。
ジェーン・エア、感想と見どころ
ジェーンの頑なな性格
ジェーン・エアの一番面白いところは、ジェーンの性格です。
頑固で真面目で頑なで、自分自身を実によくわかっているんです。自分の身の丈を知ってるからこそ、無理はせずに背伸びもしない。
虚栄心も全くなく、着飾ることもお金持ちになることも興味なく、たんたんと静かに本を読んだり絵を描いたりする、現代で言うと「自己満足」の世界で十分満たされている生き方が、「地味な女」を連想させて落ち着きます。
若くて美しく純粋で情熱的な女性の主人公が多い中、こんなに地味で淡々とした女性が主人公ってあまりないですよね?
現代で言うと完璧「オタク系女子」です(笑)
だからこその好感度の高さが、19世紀当時のイギリスでも大人気だったそうです。
ローウッドでの飢餓との戦い
ローウッドは、当時本当にあったカウアン・ブリッジ校がモデルと言われています。
シャーロットブロンテはここに入学し、2人の姉をこの学校で亡くしました。
作中のヘレンは、シャーロットの姉のアンをモデルにしていると言われ…
そういわれてから改めて読み返すと、辛かったリード婦人の屋敷からきたローウッドで、天使のように降臨するヘレンの愛らしさや優しさ、ぬくもり、そして聡明さが、劣悪な環境で失われてしまったことが改めて痛烈に突き刺さります。
シャーロットも、エミリーも2019年でも名を知らぬ者はいない大作家。姉のアンも、聡明でかけがえのない人物だったに違いない、と思えてしまいます。
そして姉を「ヘレン」として「ジェーン・エア」という名作に残し、姉に永遠の命を残したシャーロットの想いも、泣けます。
粗末な食事。
強制的な断髪。
教師の露骨なひいきと悪意。
これが実在の学校をモデルにしたなんて、信じたくないほどの酷い環境です。
ロチェスターのひねくれ頑固
ヒロインの相手役であるロチェスターのひねくれものの一面がww
ひねくれすぎてて読者としては「こ、この男やめとけば?」と思うのだけど、ジェーンもいい感じで同じくらいひねくれていたから、めっちゃお似合いです!
お似合いな上に…それまで「ブス」とか「不美人」とか「美しくはない」と言われ続けたジェーンを、世界一の美女のようにあがめ奉ってくれるロチェスター氏の愛が、何とも言えず、かわいく愛おしく、読者を幸せな気持ちにしてくれるんです。
愛されるってこういうことだよね…と。
ジェーンの叔父
ジェーン・エアは上下巻に分かれています。
上巻のラスト付近で、初めてこの「ジェーンの資産家の叔父」が登場します。
この時はリード婦人に対して「ひどすぎる…おじさんに居場所教えてあげてよ!」と思うのだけど、子どもの頃にジェーンがこの叔父に引き取られていたら、ロチェスター氏とも出会っていないし。やっぱり物語としては、このめぐりあわせのタイミングがベストだったんですよね。
この叔父さん、結局1回も作中にまともに登場しませんでした(笑)
でもこの叔父さんのおかげで、ジェーンもダイアナもメアリーもセントジョンも、そこそこ裕福になれるんです!
おじさんの資産を4人で分けることは、最初はセントジョンやダイアナたちは反対するのだけど、ジェーンの強い説得でみんな幸せになれるんですよね。心がほっこりするポイントです。
この3人の血縁がみつかったことが、ジェーンにとってはお金よりも価値のある素晴らしい喜びだったんです。
この時代の「資産家」
この時代、貧しい世帯の女性は「家庭教師」として屋敷に務めに出ていました。
叔父の資産でジェーンはもちろん、ダイアナもメアリーも家庭教師をやめて、自宅で悠々暮らせるようになったと。
そして資産を持って初めて分かったけど、ジェーンが求めていたのは、ずっとこの「自立した女」だったんですよね。
最初にロチェスター氏と結婚まで話が進んだ時に、ジェーンがぜんぜん乗り気じゃなかったんですよ。
ジェーンを着飾ろうとお金をかけまくるロチェスターに引き気味だった。
けど、資産を持って自立した女になって初めて、対等にロチェスター氏に向かい合うことができて、すんなりと簡単に結婚することができたんですよ。
ジェーンの独立して、ひねくれもので、マニアックで「オタク系」な性格が、資産を持って自立することで初めて、堂々と表現できるようになったんです。
やっぱり女が自分に正直に堂々と生きるには、「資産を持つこと」が大事なんだなって、作品の最後の方にやっとわかりました。
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さいごに
日本では、どちらかと言うと嵐が丘の方が有名ですよね?
でも、作品が出された当時、最初に世間の注目を浴びて読まれたのは「ジェーン・エア」の方です。「嵐が丘」は作者のエミリーブロンテの死後、認められてきた作品だったと言います。
私は本の背中の「E・ブロンテ」とか「C・ブロンテ」という表記で初めて「あれ?家族?」と気が付きました。
その前に作中の「ヒースが咲き誇る殺伐とした平原」の描写でも「あれ?」とシンクロしたんだけどね(笑)
天才文才姉妹による世界の名作、いつかぜひ手に取って読んでみてください。
生涯でNO.1といっても過言じゃない、最高の作品ですから!