「ライ麦畑でつかまえて」はなぜ人気?「母」だからわかるあらすじ&解説

「ライ麦畑でつかまえて」は1951年に発表された、世界中を魅了した有名な小説です。

今回は有名な「ライ麦畑でつかまえて」の【母だからわかる】あらすじ&解説と、名言をピックアップ。更には作者のサリンジャーについても紹介していきます。ネタバレ有りなので見たくない方はご遠慮くださいね。

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余談ですが…「ライ麦畑でつかまえて」を読むなら訳者は村上春樹か野崎孝かどちらがいい?と言われると…

  • 「がっつり厨二病が見たい」→野崎孝
  • 「理想と現実の違いの誰にでもある歯がゆさを見たい」→村上春樹

という読みわけができるため、2冊とも読んでみることをおすすめいたします笑。どっちか選べない…。私は野崎孝さんの方がスラスラと読みやすかったですが、2006年に村上春樹翻訳の「新解釈」のライ麦畑を読んで、「あぁ、なるほどこういうことか」と納得できることがたくさんありました。

ちなみに英題の「The Catcher in the Rye」を直訳すると「ライ麦畑のつかまえる人」となるから、先の訳者の「ライ麦畑でつかまえて」は訳間違いだと批判を受け、後の村上春樹さんは英題のままの「The Catcher in the Rye」というタイトルで訳書を発表しました。でも「ライ麦畑でつかまえて」がかっこいいから、ナイス間違いです!(狙った?)

「ライ麦畑でつかまえて」の評価(わたしの)。
  • 面白さ:4.5 out of 5 stars (4.5 / 5)
  • 読みやすさ:4.5 out of 5 stars (4.5 / 5)
  • 導入の引きこみ:4 out of 5 stars (4 / 5)
  • 読んだ後の満足感:5 out of 5 stars (5 / 5)
  • 読むのにかかった時間:80分

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蓮

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「ライ麦畑でつかまえて」はなぜ人気?

「ライ麦畑でつかまえて」を1度でも読んだことのある方なら「この小説はなぜ人気なの?」と頭をひねったこともあるはずです。

それもそのはず。「ライ麦畑でつかまえて」は「かつて世の理不尽を憎んだ傷つきやすい少年時代があった人」の心だけをがっつりつかむので、そもそも「女性」にはわかりにくいし「少年時代を忘れてしまった人」にも不可解。

わりと多くの人が「え、これが世界で6000万部も売れてるの?なんで?と思います。私も若い頃読んだ時思っていました。

けど、私は子どもを産んで2人の男の子の母となったことで、アラフォー過ぎてから「ライ麦畑でつかまえて」が何を言いたいのかがスルっとわかり、これが不動の名作であることに納得できました。

そして思いました。

「この本を本当の意味で理解すべきは【母】だ!」と。

だってみてください↓↓「ライ麦畑でつかまえて」の1ページ目をパらりと開くと…

作者のD.Jサリンジャーは「母親」に向けてこの作品を書いているんです。悩みぬいて読者目線のエンターテイメント性を捨てて、書き上げたこの作品で、

サリンジャーはこの作品で母に「僕はライ麦畑から落っこちたくない!」と言っているんです。

「ライ麦畑でつかまえて」の主人公ホールデンは、厨二病として世の中全てに毒づいて大人批判しているように見えますよね。けど、ホールデン自身も例外ではなく、ウソと軽薄な性欲と理想通りに生きられない自分自身の本音をつらつらと書いています。そしてそんな自分が「ウソと欺瞞と建前にどっぷりつかった大人」になることを拒み、最後は「聾啞者として知人のいない土地で生きていくことにする」と結論付けます。

要するにホールデンは「周りみんなインチキじゃん。(妹と弟と子どもたち以外)俺は汚ねぇ大人になりたくない!けど、このままいくと自分も妥協してインチキ人間たちの仲間入りをしてしまいそう。それが我慢できない!だからもう、誰とも口をきかずに誰とも関わらずに生きていくわ。」と言ってるんです。

そしてホールデンは「将来何になりたいかって言うと、ピュアな子どもたちまで【汚ねぇ大人】にならないように守りたい。子どもたちが汚い大人になりそうになったら(ライ麦畑の崖から落っこちそうならキャッチする、と表現)俺がそうさせないように受け止めるわ。そういう【ライ麦畑のキャッチャー】になるわ、俺。」と言っています。タイトルの伏線をここで回収してるわけです。

けど、本当は退学になり家にもどこにも居場所のないホールデン自身が、ライ麦畑から落っこちて、意味不明でインチキまみれの汚い社会の一員になりそうな自分を「誰か(母)につかまえてほしい」と願っているのです。

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戦争批判の意味もある

更に作者のことを調べると、サリンジャー自身が第二次世界大戦に従軍しており、あの有名なノルマンディー上陸作戦にも参加しています。神経衰弱として入院・除隊して戦後はトラウマに苦しめられます。その後書き上げた「ライ麦畑につかまえて」の中に「戦争批判」の意味がないわけがありません。私たちが生きる平和な文明社会の中の理不尽やインチキ程度のものではなく、「ライ麦畑につかまえて」の中には確かに「戦争という名の究極の理不尽な暴力」への怒りが描かれているんです。「汚い大人」「インチキな人間」とは、戦争を起こす

長野県上田市にある「無言館」に行ったことがありますか?そこにある「これから戦争に行く若者の手紙」を見たことがありますか?私はそれを見て、涙が出ました。何百もの「お母さん…」「お母さん…」「お母さん…」「お母さん…」。若者は戦争に死にに行くときに、遺す手紙はほとんど「お母さん」へ充てるものなのだということが、胸を深くえぐりました。

「ライ麦畑でつかまえて」の1ページ目に書かれている「母へ」も同じです。死を意識した戦争経験を経てサリンジャーは母に訴えたんです。

「ライ麦畑でつかまえて」は何を言いたいのか

お母さん、この世界はとても汚い。欺瞞と暴力とインチキに満ちている…僕はそんな世界に落っこちたくない。そんな世界に落ちそうな無垢な子どもたちを助ける人(The Catcher)になりたい。お母さん、僕を助けて(ライ麦畑でつかまえて)…僕はいつまでもライ麦畑(無垢な人だけがいられる世界)にいたいんだ。

「ライ麦畑でつかまえて」は、「この汚い世界で生きていたくない。お母さん、僕という人間を理解してほしい。」というサリンジャーの魂の叫びなのです。

蓮

ちなみに「ライ麦畑の反逆児」という映画では、サリンジャーの母親はものすごく息子を理解しているよき母でした。だからサリンジャーも作品を通して自分をさらけ出すことができたんですね。

「母」になってから読んで、初めて「ライ麦畑でつかまえて」を理解することができました。

だから「ライ麦畑でつかまえて」は世界中で6000万部も売れる人気小説なんです。誰しも一度はこの世の不条理や暴力に絶望し「この世界は汚い。お母さん、助けて。自分は無垢なままでいたかった。」と思うからです。

老若男女、誰しもが。それでもこの世で生きていくために、自分も汚物にまみれてあらゆる「インチキ」に染まることに、我慢できなくなるからです。

お金や地位や名誉などのために、いつの間にか自分の中から子ども時代にあった「無垢さ」がなくなっていることに気が付いた時、誰しも絶望するのではないでしょうか。そしてホールデンのように、そしてサリンジャーのように、「生涯、誰とも関わらずに聾唖者のように生きていこう」と思うのではないでしょうか。ライ麦畑に居続けるために。

>>悲しい方法でライ麦畑に戻ってしまった「車輪の下」の解説はこちら

「ライ麦畑でつかまえて」の登場人物

主な登場人物は主人公と、その妹と、その弟と、初恋のジェーンで、それ以外は覚えなくても大丈夫ですが、単発であらゆる人が出てくるので、簡単に全員紹介しますね。

  • ホールデン・コーンフィールド…16歳の感じやすい少年で、この物語の主人公。ペンシー校を退学になり、やり場のない想いを抱えている。学校にも家にも居場所がなく、4度も退学をして、周囲全てをインチキで汚く、子どもたちだけが無垢できれいな存在だと考えている。
  • フィービー・コーンフィールド…10歳のホールデンの妹。兄を本当に大好きで、一緒にいたいと願う無垢な少女。
  • アリー・コーンフィールド…白血病で亡くなったホールデンの弟。ホールデンの回想の中でのみ登場する。やはり無垢で素晴らしい存在として、兄に語られている。
  • D・B・コーンフィールド…ホールデンの兄で作家。
  • アックリー…ペンシー校の寮にいる生徒。ニキビ面で不潔で面白い会話ができないからと、級友たちからはぶかれている。
  • ストラドレイター…ペンシー校の寮でホールデンと同じ部屋の男子生徒。軽薄で女の子好きで、ホールデンの初恋の彼女とデートしたために、退学になったホールデンに殴り掛かられる。
  • スペンサー先生…ペンシー校の教師で、ホールデンにエールを送ろうとするが、説教臭すぎて胸に響かない。
  • サリー…ホールデンと昔付き合っていた彼女。見た目は素晴らしいけど、外観ばかり気にして中身のない女だと、内心軽蔑している。
  • カール・ルース…ゲイやカップルの内情に詳しく、その手の話題において珍しくホールデンが認める先輩だが、退学になり精神不安定なホールデンにサクッと見切りをつけて立ち去る。
  • ジェーン・ギャラガ―…ホールデンの幼馴染で初恋の少女。ホールデンの寮の同居人のストラドレイターとデートをしたと聞き、ホールデンは苦しんで、何度も連絡を取ろうとする。作中に名前以外出てこない少女。
  • 2人の尼さん…ニューヨークのホテルで出会った2人の尼さんは、世俗にまみれておらず純真に見え、作中でホールデンが珍しく褒めている人物たち。
  • ジェームズ・キャッスル…ホールデンの元同級生。寮内で級友たちからいじめられても、自分の考えを曲げずに相手に屈せず暴行を受け、寮の窓から自殺を遂げた。そのことでホールデンから「あいつは好きだった」と評価されている。

「ライ麦畑でつかまえて」のあらすじ(ネタバレあり)

蓮

あらすじを書くのがとても難しいですが、頑張ってみます笑

物語は主人公のホールデンがペンシー校を退学になるところから始まります。「多少世話になったと言えなくもない」スペンサー先生に別れの挨拶しばら寮に戻ると、同室のストラドレイターがホールデンの初恋の彼女とデートに行くと言い出します。

ニキビ面でみんなからハブにされているアックリーにかまってあげながら、ホールデンは退学のことを両親に知られるのを面倒に考えます。デートから戻ってきたストラドレイターが、ホールデンの気になっているジェーンと車の中でいちゃついたと聞いて、突然怒りがわいて殴り掛かり、そのまま勢いで寮を飛び出します。

退学を叱られるのがわかっているので家に帰れず、ニューヨークでホテルに泊まってしばらくぶらつくことに決めました。

バーでナンパした田舎者の女性3人や、ホテルのポン引きと娼婦、今まで出会ってきた「インチキな」クラスメイト達のことを心の中で毒づきながらも、心とは裏腹におごったり媚びを売っている自分を淡々と読者に語って聞かせます。

昔付き合っていたサリーと会うも、デート中にケンカをして別れ、元旧友のカール・ルースを呼び出して会うも、ホールデンのあまりの「厨二病」っぷりに呆れられ、去っていきます。身の置き場もお金もどんどん失くしていくホールデンは、この世でただ1つの「居場所」ともいえる、妹のフィービーのところに会いに行きます。

この世でただ1人、ホールデンが心から会いたいと思うのは妹のフィービー。そして、白血病で亡くなってしまった弟のアリーでした。

両親にバレないようにこっそりと自宅に忍び込んで妹に会いに行くと、退学のことを聞いたフィービーはすっかり怒ってしまいます。

「あなたは何も好きじゃないんだわ」

「じゃああなたは何になりたいの?」

率直な思いと心配をぶつけるフィービーに、ホールデンは言います。

「ライ麦畑で子どもたちが走り回ってて、大人は僕だけ。その中の誰かが崖から落ちそうになったら、落っこちないように助ける人になりたい。ライ麦畑のキャッチャーになりたい。」

フィービーはそれに対する返事はしないものの、ホールデンがもう少し両親から身を隠していられるように、虎の子のお小遣いを全部渡してくれます。(泣けるwww)

ホールデンは元教師の家に身を寄せようとするも、夜中に酔った先生に身体をいじられ、ただならぬ雰囲気に逃げ出します。

どこにも居場所を見つけられず、フィービー以外のすべての人は「大人の汚さ」にまみれているように見えるホールデンは、アメリカ西部に1人でいって、聾唖者のように暮らして生きていこうと決意します。

けど、別れを言うために会ったフィービーの無垢な心や存在にふれ、ただただ涙が流れるのでした。

蓮

「車輪の下」の解説でも書いたけど、車輪の下でも同じようなシーンがあったのが印象的です。「二度と少年時代に戻れない」って青年にとっては本当に辛いことなんでしょうね。

「ライ麦畑でつかまえて」名言10選と見どころ

蓮

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「ライ麦畑でつかまえて」は名言が散りばめられています。私なりの名言を紹介いたしますね。

「母親」に対する想い

彼女は全然間抜けに見えなかった。この人なら、自分の息子がどれくらい悪質なやつか、ある程度分かっててもいいはずなのになと思った。でもまあそういうものでもないんだろうね。相手はやっぱりなんといっても「母親」なわけだからね。そして母親ってのはさ、みんなちょっとづつ正気を失ってるものなんだよ。

子どもを持つ母として、ここを読んだ時「うっさいわw」と思い、同時に「まぁ…その通りだけどさw」と思いました。サリンジャーはよくわかっていますね、さすが。「ライ麦畑につかまえて」の本の1ページ目には「母へ」と書かれています。世の中の男子の母が、息子をとても愛しているのと同時に、息子を全く知らないという事実を皮肉っているのかもしれません。しかし、この時の級友の母親に対して、内心このように皮肉りながらも「感じがよく素敵な人だ」と全体の評価はとてもいいんです。母親を嫌いになり切れないサリンジャーの本音が垣間見えますね。

人生はゲーム

人生はゲームなんだよ。人生とは実にルールに従ってプレイせにゃならんゲームなんだ。

これは退学になった時にスペンサー先生が言う言葉です。まさにその「ルールに従う」ことが「インチキでウソに満ちた大人になること」として、ホールデンが嫌っていることです。けど、退学になるホールデンに対しては、スペンサー先生の的確なアドバイスと言えますね。「挨拶をする」とか「3食食べる」とか、わたしたちも誰かが決めたルールに則って生きていますが、それが「インチキでばかばかしい」というホールデンの気持ちもわかりますよね。

嬉しくもなんともないのに

いつだって僕は、会ってうれしくもなんともない人に向かって「お目にかかれてうれしかった」って言ってるんだから。生きていたいと思えば、こういうことを言わなきゃならないものなんだ。

本当にその通りですね。他人の気を悪くしないために決まった「ルール」に従って生きていると、自分の心にもないことを言い続けなくてはいけません。ホールデンが世の中の何に対して「インチキだ」と言うのかが、よくわかる一説です。

車に夢中

たいていの人は車に夢中になっている。ちょっとでも傷がつきやしないかってひやひやしている。話題ときたら、ガロンあたり何マイル走るかっていうようなことばかりだ。ついこの間新車を買ったばかりだって言うのに、それを下取りに出してもっと新しい車を買うことを考え始めている。

ホントそうですね。バカですね。車の傷や、次々新しい車に乗り換えてる人は、ホールデンに言わせればこんなに「おバカ」に見えるんです。

映画を観て泣く人

インチキ臭い映画を観ておいおい泣いてる奴なんてさ、十中八九まで実は根性曲がりのカスなんだ。

言われてみればその通りですね。でも映画館に行けばこのような人はたくさんいます。ホールデンは「他人の思惑通りに生きる」ことがとにかく気に食わないと考えていることがよくわかります。

勇気のない自分

完全な無名人になる勇気を持てない自分にうんざりしてるんだ。

この世のルールを拒みながらも、完全に無視して生きられないホールデン自身の弱さを嘆いたセリフです。どこかでまだ「才能を開花して素敵な人と結婚して、たくさん稼いで」という未来を捨てきらずにいる葛藤が見えますね。これだけ世の中が「勝ち組負け組」を意識している競争社会の中で、完全な無名人になるのは本当に勇気のいることです。けれど、この作品を書いた後にサリンジャーは数作を出版しただけで、田舎で隠遁生活を送り、文字通り「完全な無名人」になったのです。勇気ある決断だったのだと、改めてわかります。

太陽が出ているとき

たしかに太陽が出ているときは、そんなに悪くないよ。でもさ、太陽なんて自分が出てきたいときにしか出てこないんだ。

このセリフは弟のアリーの死を回想しながら考えています。弟が死んだあと、ホールデンは素手でガラスを何枚も割って入院し、お葬式には出られなかったけど、「ろくでもない」親類が大勢集まり、弟を窮屈な場所に埋めてお腹の上に花を置く。そんなこと、死んだ人間が望んでいるわけないのに!と憤ります。無垢で素敵な弟アリーが、幼くして白血病で命を亡くしたという「世の理不尽」をどうしても飲み込めないホールデンの葛藤が見えるシーンです。

初恋のジェーンとは全然連絡が取れず、サリーとはケンカして、学校も退学になり、弟は死に、ポン引きからは殴られてお金を取られ、ナンパした子はろくでもなく、頼った先生はゲイとして体を触ってきて、両親は退学のことを激怒する(と予測できる)。この世界にどうしても居場所を見つけられないホールデンに、太陽が昇ってほしいと願いました。けど弟が死んで以来、ホールデンの太陽は沈みっぱなしなんですね。

サリンジャー自身が第二次世界大戦で多くの理不尽な「死」を目撃し、言葉にならない怒りを「弟の死」として書き出している個所です。

単一化しろ

なにしろ口を開けば単一化しろ、簡略化しろ、そればかりなんだ。そうできないものもあるってことです。

資本主義社会のダークな部分ではないでしょうか。物事効率化を追求すればいいってものじゃないですよね、ホールデン君。私にはあなたの言っていることがよくわかります!その先に「人の幸せ」があればいいけど、その先に「金」や「自分の名誉」があると、汚くて魅力がないんですよ。

何もかもインチキ

あなたは世界中で起こる何もかもインチキに見えてるのよ。

フィービーがホールデンに言い放った言葉です。10歳の妹にバレバレですね。というか、フィービーも兄のアリーを亡くして傷ついているので、危ういホールデンが心配でしょうがない感じが健気です。

ライ麦畑でつかまえて

つまりさ、よく前を見ないで崖の方に走っていく子どもなんかがいたら、どっからともなく現れて、その子をさっとキャッチするんだ。そういうのを朝から晩までずっとやっている。ライ麦畑のキャッチャー、僕はただそういうものになりたいんだ。

有名なタイトルの伏線回収の場所です。若い頃読んだ時は「意味不明…」と思っていたけど、今ならバッチリわかります!子どもが汚い大人の世界に足を踏み入れそうになったら、守ってあげたいんですよね。ホールデンもサリンジャーも、本当に繊細で優しい心の持ち主なのだと、よくわかる名言です。「ライ麦畑でつかまえて」はティーンズの厨二病の話ではありません。ホールデンの言うところの「インチキな世界」は広い目で戦争や虐殺も包括しているんです。そういうものから、世界中の無垢な魂を守りたいと願っているんです。

先のことはわからない

先になって君が何をしているかなんて、実際に先になってみなきゃ君にだってわからないんじゃないか?

本当にその通りなのに、進路に迷っている若者に「君は将来どうするつもりなんだね?」と聞くバカな大人たちよ…。ここまで読めばあなたもすっかりと、ホールデンの目線が身につくのではないでしょうか。先の利益のことばかり考えて、今足元はどっぷりと汚物にまみれていませんか?

サリンジャーはどんな人?

作者はD.J.サリンジャー。本作で一躍脚光を浴びたものの、他人の目に媚びずに自分の納得のいく作品作りにこだわった生粋の天才です。この小説を発表後に結婚して2児の父となりますが、数年後に離婚。

2017年に公開された映画「ライ麦畑の反逆児」によって、サリンジャーがどのように「ライ麦畑でつかまえて」のホールデンを生み出したのかが如実にわかります。サリンジャー自身が、ライ麦畑の主人公ホールデンのように傷つきやすく繊細で、大人の建前や欺瞞を「インチキ」と憎み、理不尽に背を向ける潔癖な心の持ち主だったのだと、この映画では描かれています。

D.J.サリンジャーもホールデンと同じで「この世のすべてのインチキ」と関わらないよう、生涯田舎の高い塀の中の敷地で暮らしました。と思われていましたが、実際は村で人々と交流して、イベント参加などしてつつましくも暖かく暮らしていたということです。没年なんと2010年…最近です。

バナナフィッシュとの関係

「海流のなかの島々」の記事でも書きましたが、人気漫画のバナナフィッシュの副題で「ライ麦畑でつかまえて」というものがあります。当時中学生だった私は(昔のマンガです笑)「え?何この言葉…」と調べ、世界的に有名なサリンジャーという人の小説だと知ります。で、意味も分からず読むわけです。で、さっぱりわからなかった記憶があります笑。

バナナフィッシュの孤独な主人公はよく、サリンジャーやヘミングウェイの小説を引用していて、「この世の汚さ」や「不条理」を比喩していたんですね。今頃わかりました。

バナナフィッシュの中でも「ライ麦畑でつかまえて」は「この汚い世界に僕はいたくない。助けて!」という意味だと思うので、やはりサリンジャーのメッセージをそのようにとらえているのだなとわかります。

バナナフィッシュは古い少女漫画なので今読むと「古!」と叫びたくなる、昭和感ただよう内容ですが、2018年に新しくつくられたアニメは、現代バージョンでスマホとかも使っていて、かなり完成度が高く見やすくなっています!ファンの方はぜひ見てください!アッシュも英二もたまらない美男子です笑。

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「ライ麦畑をつかまえて」の後にはなにがおすすめ?

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ライ麦畑につかまえての後には「フラニーとゾーイ―」がおすすめです。より読みやすくなって、サリンジャーらしい「わからない人はわからなくていいよ」的な突き放しの中に、万人が「わかるわ!」って共感できる感情が埋もれていて、読んだ後の満足度が高かったのでおすすめです。

大人になって久々にライ麦畑につかまえてを読んで、まさかこんなにも理解することができるとは思っていませんでした。すべて、サリンジャーが1枚目に書いてくれた「母へ」がきっかけです。人の母になって初めて分かる新しい感想が次々とわいてきて、ノリノリで記事を書くことができました。

サリンジャーの他の作品も、今後書いていくのでまたお付き合いくださいね。最後まで見てくれてありがとうございました。

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