2023年に読んだ本の感想を点数と共にお伝えしていきます。すべて主観ですが、参考にしていただければと存じます。
海外文学・国内文学・実用書など色々織り交ぜております。
今回紹介する作品のほとんどはAmazonkindleで読み放題することができます。初回30日間なら無料で読み放題できますよ♪(他にも12万冊読み放題枠で見れます!)
漫画もたくさん読み放題だよ♪
私は大人ですが、皿洗いや調理の時にこれで新刊を読んでます。Amazonkindleとタブる提携で、年間数十冊の本が読めて助かっています。「忙しくて本を読む暇がない」という方にものすごくいいですよ!
1位:同志少女よ、敵を撃て(99/100点)
逢坂冬馬さんの処女作にして最高傑作です。(画像タップでAmazonkindleで読めます)
セラフィマは1940年頃、ロシアの小さな村に住む素朴な少女でした。大人になったら幼馴染のミハイルと結婚して、勉強したドイツ語でロシアとドイツの橋渡しをする。そんな素朴な夢を抱く少女でした。
ある日セラフィマの村にドイツ兵連隊が現れ、あっという間に村人全員を虐殺…母と狩りに出ていて難を逃れたセラフィマも捕まり、慰み者にと生き残りますが、凌辱の限りを尽くされた村の女たちの横でふるえることしかできません。そこへ現れたロシア赤軍の救援に救われ、自らも狙撃兵として第二次世界大戦に身を投じていきます。
「何のために戦うのか?」と問われるといつも「私は女性を守るために戦います!」と答えるセラフィマは、スターリングラードの激戦を経て、軍でも名をとどろかす名狙撃手へと成長していきました。
母を殺したドイツの腕利きの狙撃手との因縁の対決の行方は…?!!
死ぬほど面白かった「同志少女よ敵を撃て」は、第二次世界大戦下のロシアの兵士が主人公です。しかも女の狙撃手という異例の存在に焦点を当て、驚くほど綿密に歴史を調べて書いてあるため、当時のロシアとドイツの戦いを臨場感をもって知ることができます。
第二次世界大戦のときに、世界中でも珍しい「女兵士」「女部隊」を持っていたロシア軍。スターリンの大粛清(軍の主要人物をたくさん殺してしまった)によって軍の力は弱まっており、カザフスタンやウクライナ兵士も混在する「赤軍」という位置づけも面白かったです。
同じロシア軍なのに、内部で主義主張がぜんぜん違って、ロシア軍内でも命を狙い合う人たちと隣り合わせのが常に続くんですよね。
当時のドイツの文献に「どこからか狙っているロシアの狙撃兵に次々と仲間がやられた。あるとき狙撃兵の居場所が、木の上であることを発見した。そして木の上に向かった銃の乱射で、ぼろぼろとロシアの狙撃兵が木の上から落ちてきて驚愕した。それはみんな女兵士だった。彼女たちは、男性兵士ならだれもが知っている【木の上は逃げ場がないから登ってはいけない】という前線の教訓を知らなかったのだ。女の未熟な兵士たちだった。」とあります。
映画の「バタリアン」とかこの「同志少女よ敵を撃て」では、女兵士に焦点をあてて書いていますが、実際女性兵士は当時は本当に珍しかったんですよね。
この物語の面白いところは「ロシアとドイツの戦争の歴史を詳しく知ることができる」ことと、「実在のロシアの女スナイパーが登場すること」です。負傷して前線に出られなくなってからも、アメリカやロシア国内で指導や講演にあたってた女スナイパーのあまりにもリアルな「暗さ」で一気に「これは現実に起きていたことなのだ」と気づかされます。
そして別の書籍の「戦争は女の顔をしていない」との関連もあり、あの時代戦地に出ていた女性が、前線で何を思い、何を見たのかが苦しいほど伝わってきます。
「同志少女よ敵を撃て」
物語のラストでセラフィマは、誰を自分の「敵」として撃ったのか。
それは現代を生きる私たち全ての「敵」と同じ、誰の中にも存在する化け物でした。
第二次世界大戦で、日本は敗戦国として民間人をあわせると400万人を超える死者を出しました。しかしロシアは2200万人の死者を出すという、桁違いの被害を負っています。
2022年4月現在、連日ニュースでプーチン大統領が「これはナチスとの戦い」と強調していて、明らかなウクライナへの侵略なのにも関わらず、なぜかロシア国内での支持が上がっていくことからも、ロシアが歴史上でナチスドイツにどれだけ被害を浴びてきたのかが推測できます。
2022年だからこそ読んでほしい名作です。
2位:透明人間は密室に潜む(95/100点)
人間が透明になる病気が蔓延した世界。体中にファンデーションを塗ることで自分の存在を周囲に知らせることが義務とされていた。けどある教授が「透明人間になった人間を、元の姿に戻す研究開発に成功した」と発表したことで、世間は大いに期待を寄せた。
しかし、ある透明人間は、とある理由からその教授を死に至らしめてしまうのだった…。
すみません、舐めてましたがめっちゃめちゃ面白かったです。4個の短編が入った小説で、「透明人間は…」はその1個目です。サクサクっと謎が解けて次の話に行くのですが、そのテンポの良さが絶妙。しかも4話全部とも、謎の解明がスマートで素晴らしかったです!ついでに言えば、4話とも「動機」が素晴らしかったです!
「あー…くそ、そうきたか…。」
と一個も謎を解けなかった私の替わりに、推理小説好きな方はぜひ、謎解きチャレンジしてみてください。
3位:戦争は女の顔をしていない(95/100点)
1978年から500人を超える「元ロシア兵」の女性たちにインタビューをしたノンフィクション作品です。元狙撃手。元衛生兵、元看護兵、元通信兵…第二次世界大戦で、敗戦国の日本は民間もあわせて300万人の死者を出しましたが、ロシアは2700万人の死者を出したと言われています。ロシアとドイツの歴史に名を刻む戦いの前線にいた女性たちが、何をみて、戦後のいま、その記憶をもって何を語るのか…。
最初に読んだ時は「ロシアって女性も兵隊に出るのか。怖いな」くらいにしか思いませんでしたが、最近出た漫画版の「戦争は女の顔をしていない」は受賞選考に名を連ねており、臨場感がより伝わるとして高い評価を受けています。
漫画の1巻は「生理中の女性を想定していない軍隊の中で、男性用の平服をまとった女性が何キロも経血を垂れ流し続けながら進軍し、またで固まった血は乾いてパリパリになり、歩くときに太ももの内側に突き刺さって、誰もが足を負傷していた。」とあり、戦争は女の顔をしていないとは、つまり女が前線に出て長くいることを想定して軍装備を作っていない意味かな。と思いました。
けど、2巻3巻と読み進めるうちに、「そうか、戦争は男が起こし、男が行うものなんだ」と納得し始めます。前線のどこもかしこも悲惨すぎて、止まらない狂気が敵味方かまわず飲み込んでいきます。
4位:ウクライナにいたら戦争が始まった(94/100点)
東日本大震災を幼稚園の時に体験した、女子高生琉唯が主人公。反抗期真っただ中の娘2人を連れて、父の赴任先のウクライナのブチャに移住します。淡々と日常を過ごしていたら、ある時突然に戦争が勃発。帰ろうとしたら家族がコロナに罹患して自宅待機命令を出され、そのまま信じられない戦争の真っただ中に投げ出されます。爆撃、虐殺、性暴力という現実に乱暴に向かい合い、現代日本の女子高生が何を思うのか…。
一応フィクションではあるものの、現地の取材をしてきたの?というくらい臨場感漂う戦争情景が描かれており、「実際に起きたルポだ」と思いながら読んでしまいます。
ある日急に頭の上に爆弾が落ちてくる恐怖や、その後「耳が聞こえない」「灰で何もかも真っ白」「逃げ惑う人の群れで踏みつぶされる恐怖」「問答無用の敵兵からの射撃」がただただ恐ろしく描かれており、本を持つ手に汗握ります。
個人的には、日本は欧米よりの報道が多いので、ロシアの事情を私が全く知らないため、ロシア批判の意味はこめたくありません。
ただ、ある日いきなり街を封鎖して、爆弾を落とし、逃げようとする武器を持たない市民に発砲する。
戦争が持つその暴力性を感じるのに、十分な作品でした。
この本を読んで一番印象的だったのは、「パスポートを持っていた外国人はすぐに空港に輸送され、パスポートを持たない外国人は、強制労働地に送られた」ということです。 海外行って何か起きたら、下着か靴の中にパスポート入れときましょう。
4位:ウィグルジェノサイド(94/100点)
ほんの20年前まで、まだまだ「自由に話すことができていた」というウィグル人のこの20年の変化を、赤裸々に描いた作品。
これだけ世界に周知されていても、まだ解決できないのかと信じられない内容が最初から最後まで続き、恐怖で涙が流れました。
興味深かったのは、ウィグルと日本の因果です。1940年頃、大東亜戦争に突入する前にウィグルも独立をかけて、アジアの星であった日本に援軍を頼みますが、日本はフィリピン・インドネシアの独立のために派兵しておりウィグルからの依頼は断ったのだと。
当時山ほどあったアジアの植民地は、日露戦争でアジア系民族の日本が勝利したことで、周辺諸国も次々と植民地からの独立を果たしたのだと。
私たち日本人は幼いころから「戦争をして朝鮮半島を侵略しちゃった悪い国です、私たちは」と教わってきたため、「日本はアジアを植民地から救ったリーダー的存在!」と賛美されて「え?」と目からうろこが落ちました。
もちろん1冊の本に書かれていることがすべて真実ではなく、多角方面から歴史を見ていく必要がありますが、「多角」の中の一つの側面を見た気がして、決して日本に無関係の本ではないと感じました。
5位:百年法(91/100点)
若返り術を確立させた世界。20歳過ぎたらHAVIと呼ばれる若返り施術を受ける人が増え、細胞が衰えないため、法律によって「HAVIを受けてから100年後には、国の施設で安楽死しなければならない」と決められた。しかし、権力を握った日本の大統領に気に入られれば、百年法を逃れられる。長く生きることが幸せなのか。自然に訪れる「老い」や「寿命」がないからこそ来る葛藤の中、日本国民は生きる道を模索し始める…。
原発が6個落とされた後の日本の世界観で、現代に似ているようで異なります。アメリカから輸入したHAVIという若返り術が蔓延して、世界中の人は永遠の命を手に入れたかのようにも見えたけど、若い姿のまま長く生きるからって幸せとは限らないなと思い知らされる内容でした。
「死」があるからこそ尊ばれる「生」への感謝を忘れて生きる人々は、ゴーストタウンを生きるかのようでかえって絶望しています。
近代日本の発表しているSF作品の中では群を抜いて面白かったです。
2013年の日本推理作家協会での受賞作品で、少し古いけど10年たっても色あせない面白さです。嫌われ松子の一生を書いている作家さんですね。
5位:ブラックボックス(90/100点)
主人公のサクマは、自転車の「バイク便」のような仕事でその日暮らしをしていた。未来はなく、過去のいくつもの仕事の中では、この世界に違和を感じているのにそれを表現できずにすぐに暴力に走ってクビに。サクマにとってまるで未来は真っ黒の箱(ブラックボックス)のように不透明で希望がなかった。いつまでこれを続けるのか。何のために?サクマは生きる希望を見いだせないまま連綿と続く「仕事へ行く毎日」の中で…
コロナ禍で経済がどんどんどんどん悪くなるなか、収入も増えないし仕事もないし、資格もないし、やる気もないし。でも働かざるを得ないしというお先真っ暗(←ブラックボックス)という、現代の若者がまさに抱えている悩みを投影したような、リアリティあふれた内容です。
年金ももらえないだろうし、出世は約束されていないし、収入は増えないし、現代の若者は本当にやる気起きないですよね。
読みやすくてスラスラと一気読みできる感じですが、なんせ中身がリアル過ぎて、読み終わった後自分も落ち込みます(笑)でも面白かった!芥川賞受賞作品です。
たかが殺人じゃないか(70/100点)
昭和24年、終戦間もない愛知県の17歳少年少女を主人公とした作品。GHQからの指令で、それまで徹底的に分けられていた男女が共学にほおりこまれ、一緒に教育を受けることとなった。17歳の男子学生勝利は、ミステリーサークルに所属していた。そこへ入ってきた可憐な美少女は、数年前、まだ戦争中だった頃に水浴びを目撃した少女だった…。運命を感じた勝利は彼女に惹かれていくが、戦後貧困の中、夜になると少女は歓楽街で体を売って家族の薬を買う生活を送っていた…。
少年少女の初恋の初々しさの横で、学生たちは合宿で密室殺人に立ち会ってしまい、勝利は事件の真相に近づいていくのだった。
昭和24年を舞台にした作品ということで、本当にその時代に書かれたかのように一縷の「読みにくさ」はあったものの、全体的にすっきりとまとまった教科書通りの推理小説でした。 江戸川乱歩を読んでいるような気分でした(笑)
割と最初から想像通りの内容だったにも関わらず、読み終わった時の満足度は高かったです。
代理母はじめました(69/100点)
義理の父と2人の妹と貧困のどん底家庭で暮らすユキ。17歳の時に義父にいわれるままに代理母出産をさせられて、報酬は根こそぎ義父に奪われた。このままでは死ぬまで義父の道具として、代理母を繰り返しさせられる…そう思い、幼馴染と共に荒廃した東京の街に逃げ出す。
自然災害が相次ぎ、東京には空き家が多数。金持ちが内陸部に逃げ込んだ後、管理されていない空き家で生活をしながら、代理母斡旋業者として働き始めたユキは、代理母の権利を徹底的に守る仕組みを作ろうと奮闘した。
柿谷美雨さんの読みやすい作品で、あっという間に完読しました。東京が自然災害で人が逃げ出した後、貧困者だけが逃げるすべを持たずに、金持ちのマンションなどに勝手に入って生活する、という世界観が斬新で素敵でした。
ただ、「結婚相手は抽選で」「70歳以上死亡法案可決」などに比べると、代理母という存在が抱える深刻さがイマイチ伝わってこなかった。世界観が荒廃しすぎていて、「こんなにひどい世界なら、代理母以上に人権侵害されてることがいっぱいありそう」と思ってしまいました。
もっと近代の現状に寄せた世界観の中での「貧困の中の代理母」であれば、より臨場感をもって読めたな、と思いました。
テスカトリポカ(66/100点)
メキシコの深刻な麻薬売買がされている土地から日本に逃げて来た女性が、日本で出会った男の子どもを産むが、義務教育を受けさせずに自宅で育てます。息子の名前はコシモ。日本語もろくに話せず、わずかなスペイン語だけで何とか日々を生きる彼は、やがて天涯孤独に陥ります。
そこへ、メキシコの麻薬密売組織の一員だったバルミロが、今度は臓器売買ビジネスを手掛けるために来日。コシモと運命的に出会い、二人は「ファミリー」として信頼を深めていくのでした。
直木賞受賞作品としてかなり読みやすい作品ではありましたが、登場人物の名前の多くが南米のスペイン系の名前で、とにかく人物が頭に入ってこないというデメリットが、最初から最後まで引きずられました。
直木賞受賞作品としてかなり期待して読んだだけあって、かつてのアステカ帝国の思想・理念がしっかりと書かれていましたが、それが現代の臓器売買ビジネスとコラボされて、臓器売買ビジネスをする仲間を「家族」として絆を深めようとしていたところに違和感を覚えました。
東南アジアを取り巻く臓器売買ビジネスについても詳しく書いており、東南アジアに旅行に行くのが怖くなるくらい…(笑)日本でも年間数万人いると言われている「親のいない子ども」がどこへ消えているのか、想像して恐ろしくなるでしょう。
最初の本の分厚さにちょっとしり込みしますが、人名以外は読みやすく、分厚さもそれほど気にはなりませんでした。
小説以外の本の感想と点数
Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?(75/100点)
マーケティングの勉強をするときに、人から進められて買った本ですが、めっちゃわかりやすかったです。Z世代を対象にお仕事されている方には超絶おすすめ!「わけがわからない…」と思っていた若者の嗜好が、なんとなくわかるようになっていました。
隠れ教育費(65/100点)
恐ろしいほど義務教育の中でお金がかかっているのだと、思い知らされました…。数字の羅列で読んでいて「面白い!」とかいう感じでもないけど、親なら読んでおくと参考になるかなと思います。ただ、読み終わった後、ため息が出ますww
「子育て世帯は優遇されてる!」とか給付金が出るたびに批判を浴びることも多いけど、そんなの追いつかないくらい、死ぬほどお金かかってるんですよ…。
僕が親ならこう育てるね(60/100点)
Youtubeきり抜きとか、アベマTVとかはよく見るけど、ひろゆきさんの本は初めて読みました。想像通り読みやすく、完読まで30分もかからなかったかも。ひろゆきさんのユーチューブ動画を一本観たような感じでした。
ひろゆきさんご自身はお子さんの有無は不明ですが、実際に子育てをしている私から見ると、「育児をしたことがないっぽい」感じがしました。もしくは、お子さんが小さすぎてまだまだ、「そう上手くはいかないのよ…」という壁に当たってない感じがしたというか。勝手な感想ですが。
ただ、ご主人がこんな感じで育児を俯瞰してとらえていて、方向性もちゃんとビジョンとして持っていてくれたら、奥さんは頼りがいのあるご主人でいいなぁとも思いました。育児に迷って旦那に聞けば、必ず根拠ありきの答えを提示してくれる感じで安心できました。
そして、海外の教育を受けた人の意見として、自分の子どもたちは日本だけじゃなく、海外でも活躍してほしいなと思いました。
トヨタの会議は30分(100/100点)
実用的な内容で、経営者にとってすごくためになると感じました。読みやすく、興味深く、面白い。
文章の書き方も絶妙で、「時短こそ神」って感じじゃなく、コミュニケーションの大切さも重視しているところがよかったです。効率化だけが大事ではなく、働いているのは人間だ、ということを忘れちゃいけないなと思いました。
同時に、省ける無駄な伝統的な「会議」とかはサクサクっと省いていくと業績アップにつながりますね。
別に経営者じゃなくても、読んでてめっちゃ面白いので暇つぶしに呼んでみてください。
コロナ貧困…絶望的格差社会の襲来
2020年以降、コロナ禍によって世界も日本も大打撃を受けました。日本はいまだに急速な困窮世帯の拡大で、格差が広がって混迷を極めています。その実態を詳しく描いたルポなので、必見の価値あります。