こんにちは!
文学好きの管理人です。
文学の解説動画をしており、過去に読んできた本の意味や内容のトリビアを紹介したりしています。
よければユーチューブ動画もご覧くださいね。
今回は、アメリカで「英語で書かれた20世紀最高の小説」2位であるフィッツジェラルドの「グレートギャツビー」について紹介いたします。
グレートギャツビーは面白かったのですが、
「なんでこんなに高く評価されているの?」
という点は謎でした。面白いけど、そこまでか?と…
グレートギャツビーは第一次世界大戦後の時代ですので、やっぱりアプレゲール的な意味をたくさん含んでいます。
だから現代を生きる我々にはわかりにくい部分も多いんです。
つまり…三島由紀夫の「金閣寺」みたいに、戦争を経験した人たちが、戦後経験する漠然とした時代心理を、ぐうの音もでないくらいに綿密に描いた作品ということです。
だから高く評価されてるんだと思います。
今回は、グレートギャツビーのあらすじ&感想を紹介します。
以下の内容はネタバレを含むため、読みたくない方はここまでですよ!
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グレートギャツビーの登場人物
上の画像タップで、Amazonキンドルで読める画面に行きます♪野崎孝さん訳のものは572円ですが、小川高義さんのは0円で読めます!
個人的には小川さんが格段に読みやすくておすすめです。
- ニック…主人公の29歳の青年。戦争に参加して心に傷を負って故郷を離れ、ニューヨークに目的もなくやってきた
- ギャツビー…ニックの隣人で、ギャングの密売屋の片棒を担いで巨万の富を得た人物
- トム…ニックの知り合いの富豪で、性格が俺俺で自己中の男性
- デイジー…トムの妻でニックの遠縁の女性。美人で、5年前までギャツビーと付き合っていた
- マートル…トムの愛人
- ウィルソン…マートルの夫
- ジョーダン…デイジーの知り合いの女性で、ニックと交際する
- ウルフシェイム…ユダヤ人のギャング
グレートギャツビーのあらすじ
ニックは戦争から帰ってから、故郷が「宇宙のギザギザの断崖」のように感じられて、身の置き場に困り、ニューヨークに出てきます。
ニューヨークの住まいの隣人は、ギャツビーという「ヤバいことでお金を稼いだ反ヤクザ」的な人物。
アメリカンドリームを叶えた大富豪でした。
自分の出生や学歴に自信と誇りを持っているニックは、最初はギャツビーを見下しますが、ギャツビーの方はニックに親し気に近づいてきます。
やがてニックの遠縁の親戚のデイジーに会うと、ギャツビーは「デイジーはかつての恋人。今でも愛している」と思いを伝えます。
デイジーはすでにトムという富豪と結婚して子どももおり、ギャツビーの愛を断ります。
そんな時に、トムの愛人のマートルを、デイジーがうっかりと車で引いてしまいます。
同じ車に乗っていたギャツビーや、デイジーの夫のトムは、事故の真相を隠そうとします。
しかし、マートルの夫ウィルソンは、マートルを引いた車がギャツビーの車だったことからギャツビーを怨みます。
ある日ニックがギャツビー宅に行くと、そこにはプールで撃たれて死んだギャツビーと、プールサイドの茂みで自殺しているウィルソンがいました。
発見者であるニックはギャツビーの葬儀を取り仕切ろうとしますが、ギャツビーに群がっていた知り合いの誰も、葬式に来ません。
ニックはその後、町で偶然トムに会い、「ウィルソンに、ギャツビーがひき逃げ犯だとけしかけたのは君だろう?」的なことを詰め寄りますが、トムは悪びれもしません。「当然だ」と。
モヤモヤした想いを抱えながらも、偉大なギャツビーの記憶を胸に、ニックはニューヨークを離れます。
グレートギャツビーの感想
上の画像タップでAmazonkindleで無料で読めます!一番読みやすい小川さん訳です。
まず、「グレートギャツビー」は全体を通してニックの「ロマンチストな語り」というフィルターがかかった物語だなと思います。
「確かに起きたこと」ではない、「ニックのロマンチックな創造」を起きた出来事のように語るから、実際どうだったのかよくわからない部分が多いんです。
ギャツビーの心情かと思いきや、よくよく読むと、ニックが「ギャツビーになりきって想像した心のうち」だったりするんですよ。
そんなんばっかりです。
語り手のニックは物語後半では、アメリカンドリームを叶えたギャツビーに心酔しており、ギャツビーをロマンチックな「グレート」な存在に押し上げています。
第一次世界大戦後に、多分戦争で心が傷ついたニックゆえの、ロマンチックで希望に満ち溢れたギャツビー像が、本人の意思を無視して暴走している感じです。
この物語を読みとく5つのポイントを紹介しますね。
1:ニックはPTSDだった
ニックは第一次世界大戦に出て、心に傷を負って故郷を出てきた若者です。
若者って言っても、もう29歳…
29歳でフラフラとニューヨークにきて、ちゃらちゃら過ごしています。
親戚は「ニックをどうしようか?」と家族会議を開く始末。
10代若者のように手厚く心配されているのは、戦争でおった心の傷が大きかったからだと思われます。
「グレートギャツビー」という本全体を通して、ふわふわとしたニックのロマンチストな幻想の中にいるような印象を受けるのは、深刻な心の傷を負ったニックが、文字通りロマンチストな世界を作り上げて、そこに逃げ込んでいるからかもしれません。
けど、ギャツビーが死んだ後のニックは、ふわふわしたロマンチストから、少し抜け出せたような印象を受けます。
勢いで付き合った彼女に別れを告げ、軽蔑していたトムと握手をし、ギャツビーの思い出を胸に、故郷に帰ります。
ギャツビーは不幸な結末でしたが、ニックの成長や回復は見届けられました。
本のラストからかもし出される空気が、すごく澄んでいるんですよ。
2:ギャツビーはギャングだった
本を読みながら、ギャツビーは犯罪的行為で巨万の富を得たとあるけど、何をしてるのかはっきりかかれません。
ただ、ギャツビーの共同経営者的なウルフシェイムは、「ギャングじゃんw」と丸わかり。
つまりギャツビーもギャングでマフィアで(違いがよくわからん)アウトローな人物だとわかります。
酒の密輸が禁止されているときに、酒の輸入で巨万の富を得たのだと…
それで、無一文から32歳で40エーカーの土地に豪邸を立てられるほどの大富豪になったんです。
40エーカーとは、大体だけど、東京ドーム3.6個分くらいの広さ。
バカでかいなww
そこに建てた豪邸で、よなよなパーリーですよ。
毎晩パーリーピーポーが集まります。
ニックの目に、ギャツビーは戦後の好景気に沸いたアメリカの、絵にかいたようなアメリカンドリームを叶えた英雄のように映ったんでしょうね。
グレートなギャツビーだと、心酔しきっている様子が、なんだかかわいいです。
3:この時代の女性は自立していなかった
グレートギャツビーは面白いのだけど、女性描写がひどすぎますw
物語としていい位置におさまっているからいいものの…。
まず、デイジーにしろジョーダンにしろ、金持ちの豪邸でけだるそうにダラダラして過ごし、花瓶の花のようなどうでもいい印象を受けます。
見た目さえ美しければ及第点。みたいな。
デイジーに至っては頭空っぽにさえ見える描写が多すぎて、「いくら何でも女性を馬鹿にしすぎてないか?」とかばいたくなります。
でも上流階級の女性ってこんなんなのかな。
最初から最後まで頭空っぽに描かれていて、ちょっとかわいそうです。
デイジーの特徴として書かれていることと言えば「見た目が美しい」ことだけ。
状況を鑑みれば、もうちょっと情熱やデイジーの意志があると思うんだけどな。
時代的に女性が自立していないため、男に頼るために花瓶の花か、額縁の絵か、鉢の中の金魚的な、意志を持たない存在に書かれています。
口から出るのは頭空っぽなセリフばかり。
デイジーは5年前までギャツビーと愛し合っていて、今はトムの妻で娘がいます。
心の中ではまだギャツビーを愛しているかのように言いますが、するっと巧妙に、狡猾に夫の元へおさまります。
ギャツビーの方が真摯にデイジーを愛しているように書かれているため、はっきり言ってデイジーは「最低最悪の女」という印象。
ニックがデイジーを心の底から見下しているので、その気持ちが読者にも伝染してきます。
デイジーは「トムを愛してない。ギャツビーを愛してる。けどトムとの間には子どもがいるから家庭を捨てられない。悲しい。涙。」
って感じで、「あー…はいはいはい。」ってやつです。
その後ギャツビーを助手席に乗せてデイジーが運転していた(らしい)車で、夫のトムの愛人マートルをひき逃げしてしまい、そっから雲隠れする卑怯な女。
ひき逃げ事件の主犯であるデイジーの意志は、この後も全く描かれません。
書かれたとしても、「娘のために私は犯罪者になるわけにはいかないから、自首しなかった。めそめそ」とかしそうです
ギャツビーの目立つ黄色い車だったから、マートルの夫のウィルソンは、復讐にギャツビーを射殺します(ここも怪しい)。
ウィルソンに「あれはギャツビーの車だぜ」とささやいたのは、マートルと浮気してたトム。
つまり、トム&デイジー夫妻は最悪の犯罪者カップルとして書かれています。
まぁまぁ。
たしかにトムもデイジーも上流階級にしがみつくことしか考えていない点でひどいんですが…。
それよりももっと気になるのはニックの心理です。
4:いつの間にかギャツビー大好きになったニック
最初からニックは「自分は大学を出てる」とか「いい家系だ」とか、「自分は倫理的だ」みたいな事ばっかり言ってて、なんか鼻につくやつなんですよ。
別に害はないんだけど。
ギャツビーのことも、「学がなさそうな奴だ」的に、最初は見下してる様子なんですよ。
ニックは平和主義だし、そんな内面おもてには出さないんですけどね。
ウルフシェルムのことも、「小さなユダヤ人」と、内心小ばかにしてないか?という人物描写をします。
現代ほど差別意識に対する反発がなかったので、はっきりいってグレートギャツビーの中には人種差別的発言はたくさん出てきます。
で、ニックは「俺はこの世の差別の中でいえば、上層部に位置する人物だよ」と事あるごとにアピールしてくるんですよ。
そんなニックはギャツビーを最初は警戒して軽視していたのに、ギャツビーがデイジーとの恋に破れたあたりから急に、ギャツビーを心酔しはじめるんですよ。
その心の傾きが急すぎて、小説を読んでる途中にちょっと戻って読み直し、「あれ?」となりました。
ニックはもともとアメリカンドリームを叶えたギャツビーが好きだったんでしょうね。
憧れの人物が、恋に破れて友人は自分だけって状況に、一気に親密度が上がった感じです。
しかもギャツビーは死後の葬式に、ニックと父以外誰も来ないという孤独さが判明。
「あんなにグレートな人物だったのに」とニックは同情を超えた疑問を抱きます。
「彼のすごさを理解できるのは自分だけだ」的にますます内心燃え上がり、ギャツビーの死後1年たってから、ギャツビーの偉大さをこうして小説に残すんです。
「オマエ、いつの間にそんなにギャツビーにいれこんでた?w」
と思うくらいの陶酔ぶり。
30歳の可愛い少年です。
5:ギャツビーは実は現実主義の人
グレートギャツビーは、ニックのロマンチックな幻想というフィルターがかかった小説です。
よくよく読むと、「ギャツビーは別にこんなこと言ってないのに」みたいな個所がたくさんあるんです。
ニックの妄想が加速して、勝手に「ギャツビーが多分こう考えている」って、本人の気持ちを代弁してる個所がたくさんあるんですよ。
そういう「ニックのロマンチックなフィルター」をはずしてギャツビーを見ると、どんな人になるのかなって考えてみました。
ギャツビーは第一次世界大戦の一番ひどい戦場と言える「アルゴンヌの戦い」に出ています。
けど、ニックのように神経症にはならず、ビジネスライクな人物です。
5年前に破局したデイジーのために、事業に成功してお金をもうけたいという夢をかなえた人物。
ギャングの片棒を担いで密輸に手を染めます。
パーティーの最中とか、食事の途中で仕事の電話を優先したりして、かなりの仕事人間です。
で、デイジーに再び求愛するも破局。
その後けっこう落ち込んではいたものの…
どうも‥‥
ニックが言うほどロマンチストな人間ではありません。
もっと現実主義でビジネスライクです。
でも戦争で心に傷を負ったニックにとっては、ギャツビーは「グレート」であり続ける必要があったんでしょうね。
グレートなギャツビーの唯一の友人として、ニックが神経症から回復して素晴らしい人生を歩めるのなら、ロマンチストなフィルターも納得できます。
「グレートギャツビー」という本は、ニックのロマンチックな夢の中のお話です。
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さいごに
ギャツビーはアメリカンドリームを叶えた人物ですが、元恋人にはふられ、元恋人の罪をかぶって殺され、葬式にはニックと父以外誰も来ないという孤独な人でした。
ニックの妄想フィルターを取り払ってギャツビーを眺めると、ビジネスライクでお金だけを手にした孤独な人物が浮かび上がります。
けど、唯一の友であるニックだけは、少なくともギャツビーの存在によって、戦争による心の傷から回復して人生を取り戻りました。
ニックという一人の人間の心を救ったという点で、ギャツビーはやはり、偉大な人間です。
今後も有名文学のあらすじ解説ブログと動画を頑張るので、また見に来てくださいね♪