ヘミングウェイの代表作の老人と海。単行本では5ミリの厚さのめっちゃ短いストーリーですが、あらすじを聞かれることがいいので記事にまとめてみました。
ひとことで言うと「孤独」。
世の中にこんな孤独があっていいのかよ!
ってくらいの究極の孤独が書かれています。
少年のマノーリンだけが救い…
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- 面白さ: (4.5 / 5)
- 読みやすさ: (4 / 5)
- 導入の引きこみ: (4 / 5)
- 読んだ後の満足感: (5 / 5)
- 読むのにかかった時間:20分
>>ヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」や「海流のなかの島々」の考察もあわせてご覧ください♪
老人と海の登場人物
- サンチャゴ
物語の主人公で、老齢の猟師。妻とは死別し、1人ですみ1人で漁に出る孤独な老人。 - マノーリン
5歳の頃から老人の船に乗って釣りを学び、手伝ってきた少年。今は多分10歳くらいで、別の親方の船に乗って釣果をあげている。たった一人の老人を気にかける、世界でただ一人の人物。
登場人物はほぼ2人だけです。年を取ると、関わる人間も減って、気にかけてくれる人も減るんだなぁとしみじみ…
老人と海のあらすじを解説(読書感想文むけ)
老人と海は、たった一人で海に漁に出た老人の猟師が、巨大なカジキと格闘の末、見事釣りあげる物語です。
釣り上げたはいいものの…帰る途中に船の端にくくりつけておいた巨大カジキを、サメにほとんど食べられてしまうという…切ないストーリーです。
そ、それだけ…と思うかもしれませんが、それが壮大な人生の縮図のようで、とにかく圧倒されるんです。
老漁師のサンチャゴは、84日も成果を上げられず、他の漁師たちからも無視され見放された孤独な老人。少年のマノーリンだけが老人に世話を焼いて気にかけてくれます。
あるとき釣果を上げるために、いつも以上の沖合に出ます。
巨大カジキが釣り竿に引っ掛かってから、何日もかけてやっと釣り上げ、その間に過去を回想して思い出し、自分を鼓舞し続ける精神力の強さを見せつけます。
長い経験値によって長丁場の釣り合いの勝負に勝ち、ついに巨大カジキを釣り上げた老人は、1500ポンド・18フィートもありそうなその巨体を船に乗せることができず、船の端にくくりつけます。
すると次の晩からかわるがわるに鮫が襲い掛かってきて、カジキを一口…また一口、と食べていってしまいます。サンチャゴはなんとこん棒で鮫をたたいて撃退しますが、群れで襲ってくる鮫に、少しずつカジキを食われてしまいます。
また次の晩にも鮫の群れが襲ってきて、カジキをどんどん食べられてしまいます。こん棒や舵の柄で、サメを撃退し続ける老人ですが、1人の力ではなすすべもありません。
老人と海、感想…
こ・ど・く過ぎまーす!
陸での暮らしぶりも孤独だし、海の上ではもっと孤独…少年以外は本当に老人のことを気にかけない人生がリアルに映し出されます。それは誰しも老人になったらそうなるかもしれない…というリアルな想像につながります。
孤独な海の中で「あの子がいればなぁ」と老人が2回つぶやくんですが、胃がぎゅっとなるからやめてほしいです…。
あまりの孤独に、老人はカジキやサメや小鳥と会話し続けるのですが…切ないです。
けど、「老人と海」は孤独だけを書いたものではありません。老人になって1人になって初めて、自分自身ととことん対話するようになるんです。老人が海の中で、自分自身と対話し続ける姿を見ると、私たちが先送りにしている問題と向かい合っているのだと感じられます。
また、孤独な老人が一人で海に出た時に、繰り広げられる経験則からくる英断にも驚かされます。長年海に出続けたからこそわかる、釣りの時の対処法が素晴らしいんです!
釣りの合間に食べる小魚の調理法とか、魚がいる場所をトビウオや鳥から割り出すところとか、長い釣りの間の力の配分とか、それが昼夜におよんだ時の休み方とか、とにかくすごくて驚きます。
老人というよりも、1人の経験豊かな猟師としての技量がしっかりと描かれているのも、老人と海の見どころの一つです。
また、老人の昔の漁の経験から、カジキの夫婦の仲の良さが描かれています。カジキは夫婦で行動するとき、必ずメスに先にエサを食べさせます。そのため、釣りざおのエサに食いついたメスを釣り上げると、オスは心配そうに船の周りをグルグルし、ついにメスがこと切れたら、去っていったという悲しい過去が語られます。「食べる」ということは、異種の命を断ち切る行為なのだと思い出させられました。
>>老人と海にそっくりのシーンが出る海流のなかの島々の考察はこちら
老人と海の名言のまとめ
海はやさしくて、とてもきれいだ。だが、残酷にだってなれる、そうだ、急にそうなるんだ。p24
海に対する描写がとてもきれいで、スペインで昔から「海を女性に。漁を男性に例えていた」と書かれています。冷たく残酷な仕打ちをしたり、時には芳醇に与えたりと、男たちを振り回す気高い女性…という感じでしょうか。
月が海を支配しているんだ。それが、人間の女たちを支配するように。p25
ここまで世の男性たちが達観して物事を考えてくれたら、夫婦間のすれ違いなどなくなり、平和なカップルが増えそうですが…残念ながらみんなヘミングウェイを読んでいないと見えます…。
毎日が新しい日なんだ。p27
毎日海に漁に出ていると、おそらく70歳すぎの老人でもこうした希望に満ち溢れた言葉が出るのかと思うと、命も人生も自然も尊いものだと思い出せます。
年とってひとりでいるのはよくない。かれはつくづくそう思った。
今こうしている間にも、孤独にさいなまれている老人は世界にたくさんいますよね。日本にもたくさんいます。けど、多くの人が見て見ぬふり。もちろん私も、血縁や知り合いでない限りは無縁だと思って生きています。けど、自分がもし老人になったらと思うと、この言葉は重くのしかかります。
やつらは、やつらを殺す俺たち人間ほど頭がよくないんだ。もっとも俺たちよりは、気高くて立派ではあるけどな。
釣り上げようとするカジキも、老人は常に敬意を抱いて対峙しています。
たぶん罪なんだろう、魚を殺すってことは。たとえ自分が食うためであり、多くの人に食わせるためにやったとしても、罪は罪なんだろうな。
猟師として生きてきたサンチャゴは、生きるための漁を「罪」と認識しています。
大きな海、そこには俺たちの友だちもいれば敵もいる。p110
もはや、海じゃなく人生を語っていると思われる文言が散りばめられています。老人と海が世界中の多くの人の胸を打つのは、サンチャゴが海で学んだことが、私たちの人生にもそのまま通じるものがあるからでしょうね。
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