西加奈子さんの「サラバ!」は2015年に152回目の直木賞を受賞した小説です。
読み始めたら止まらずに、一気にラストまで読み切ったにもかかわらず、「あっという間」感がなくて「2年くらい読んでた」感が残る重厚感でした。
これを読んだらしばらく小説は読まなくていいかもと思うくらいの満足度です。
作品販売に関わるようなネタバレなしの「サラバ!」の簡単なあらすじと、感想を紹介しますね。
私は面白くない小説は、遠慮なく「面白くない」として記事に書きませんので、私が感想記事を書く小説は自信をもっておすすめできるものばかりです。
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※ネタバレを含む内容なので、見たくない方はここまでにしてください。
西加奈子さんの「サラバ!」あらすじ
サラバはいびつな家族の物語です。主人公の「歩(あゆむ)」の一人称でずっと書かれており、歩が生まれた瞬間から、37歳までのストーリー。
自分勝手で見栄っ張りな母親と、僧侶のような無欲で静かな父。そしておそらく発達障害で定型社会に全く馴染めない姉と、主人公の歩の4人家族で、イラン→大阪→エジプト→大阪と海外移住を繰り返したのちに離婚。
姉と母による険悪で気を使いまくる子ども時代を繊細に過ごしたのちに、見た目がイケメンだった故に女にも仕事にも不自由しなかった高校生~20代のイケてる時期、その後来る、仕事や女に見放された孤独の時代。
そんな歩の人生を通して「自分は何を信じて生きているのか?」を深く深く考えさせられる物語でした。
西加奈子さんの「サラバ!」感想と6つの見どころ
感想と言われても困るくらい、色んな感情が渦巻く「サラバ!」という物語ですが、物語を6つのポイントに抑えて感想をまとめていきますね。
兄弟の「末っ子」に感慨深い物語
まず、「サラバ!」の主人公・歩は2人兄弟の弟です。生まれた時からずーーーーっと姉を意識し続けて生きていて、兄弟の末っ子には身に覚えのある育ち方をしています。
私も3人姉妹の末っ子なので、歩の姉から「あんたはずっと自分とわたしを比べて生きている」って言葉がずどーんと腹に落ちました。
そりゃそうですよ。生まれた時にすでにいて、高すぎる影響力を持って家族や自分を支配し続ける兄弟の上の存在を、意識して生きていくに決まっている。
よく兄弟の下の子は「上を見て学ぶから、上の子のような失敗をしない。言わなくても聞き分けがいい」などと言われますよね。
上の子が暴れん坊であるほどに、下は大人しくなるんですよ、そりゃ。
で、人生で常に兄弟を意識して「あいつがこの立ち位置にいるから、自分はこの辺り」って図って生きています、確かに。そういう生き方が子どもの頃から身についているんだからしょうがないじゃないですか。
作者もテヘラン産まれ
歩が生まれたテヘランや、幼児期を過ごしたエジプトの描写が、ものすごく鮮明で目に浮かぶように描かれているんです。実際に西加奈子さんもテヘラン産まれというから、当時の情景を鮮明に記録しているんですよね。
海外で子どもを産みたくなるくらい、素敵な書き方をしています。
宗教の物語ではない
最初からやけにイスラム教や、大阪のカルト宗教や、途中ではオウム真理教、父親が仏に帰依するなど、宗教の話が詰め込まれています。
「姉もそのうち教祖になるんでしょ?」と思いながら読んでいるので、巻末の姉の変化には、歩よりも読者が一番驚きますよwww
まさかそう来るとは…!
これは「何を信じて生きているか?」を問う物語ではありますが、決して宗教の物語ではありませんでした。
にしても深い。
姉はいったい何だったのか
私も姉が2人いますが、こんな姉がいたらたまったもんじゃないってくらいぶっ飛んだ姉で、おそらく何らかの発達障害を抱えているのだと思いますが、姉の生まれはおそらく1974年くらいの設定。当時の日本で発達障害の診断などないし、定型児ばかりの小学校に行って孤立して暗い子ども時代を過ごすことは、安易に予想できました。
自分が普通でないことに傷つき続ける姉にも同情はしますが、そんな姉を「恥ずかしい」「無視しよう」と思い続けてハラハラする歩の方が、感情移入しやすいですね。
姉は何なのか。そのうちカルトの教祖にでもなって、ますます歩に迷惑をかけてくるんだろうと思っていたのに、まさかまさかの展開に、本当に驚きました。
姉は「普通の姉」だったんです。
姉からの手紙が歩のすべて
巻末の姉からの手紙は、だからこそ、泣けました。
好き勝手生きた上に、信じるものを見つけて、歩に対して「愛情深い姉」として意見をしてくる姉に腹を立てて、見ないように聞かないようにする歩に本当に感情移入できました。
自分が見下してきたものが、はるか高みに行ってしまった悔しさや焦燥感も、よくわかりますが、心の奥底で「よかった」があるのも、わかります。
姉は、歩自身よりもずっとずっと、姉として歩の本心を見抜いており、それを歩に伝える優しさを持った、普通の姉でした。
姉が2人いる私からすると、このタイミングで上から「あなたはこう生きるべきよ」なんて諭されたら、「は?お前が上から物を言うなよ」と腹を立てますがw
ナイル川の白い生き物の正体
本を読みながら常にヤコブのことが頭から離れなかったので、最後の最後にエジプトに向かったときホッとしました。
あの時の白い生き物の正体は、私はわかりませんでした。
「サラバ!」をこの先の人生で何度も読み返して、そのうち、わかる日が来るような気がします。
けど、私の人生でも「ナイル川の白い生き物」がどこかで現れたような気はします。確かに。
西加奈子さんのサラバ!あらすじ感想まとめ
いやぁ、小説って本当に良いですよね!
と大声で言いたくなるほどの名作でした。
西加奈子さんの「サラバ!」ぜひお手に取って読んでみてくださいね。日本の直木賞のほかの作品はこちら。
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