月9ドラマ、って感じのイメージの江國香織さんが書いた、「号泣する準備はできていた」を読みました。
短編集の中の1つの作品なので、5分かからずに読める超短編です。
直木賞受賞作品として、じっくりと何度か繰り返し読みましたが、女性の性が掘り下げられた深い話でした。
つーか、自分自身の「号泣したいのに強がっちゃった過去」がよみがえって、死ぬほどの後悔がリアルに押し寄せてきましたw
- 面白さ:
- 読みやすさ:
- 導入の引きこみ:
- 読んだ後の満足感:
- 読むのにかかった時間:5分
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「号泣する準備はできていた」のあらすじ
主人公の文乃は自由気ままなモテモテ女性。
定職につかないフリーターで、ウェイトレスなどをしながら生活し、旅行と恋を愛して流れに身を任せて生きている。
ある時旅先で出会った隆志に惹かれて一緒に暮らし始めるが、隆志の浮気で破局…
あまりにも強くあろうと生きてきたために、隆志にすがることもなくおとなしく分かれてしまった。
本当は、号泣するほど悲しいのに、素直に泣けない…。
号泣する準備はできていた、の感想
江國香織の真骨頂という感じの短編小説でした。
江國香織らしい、強くて旅好きで自由気ままに恋愛を楽しむ女性が主人公で、
「ちぇ。またモテモテ女がフワフワしたことを垂れ流す系か…」と思って読んだけど、
読んだ後のこの敗北感はなんだよwww
って思わされる内容でした。
別にモテモテでもなかった私でさえ、「女」というひとくくりの中で、主人公に共感して一緒にじんわりと心臓から血がにじみ出るような切なさを味わってしまったじゃないかww
さすが江國香織さん…
心がオッサンの私でさえ、こんな短編集の一撃だけで、あっという間に「女」にしてしまうなんて…。
この話を読んで、私は私が心底女性であることを思い出しました。
浮気されたのが悔しいとか、
それに対してみじめに泣いてすがれなかったこととか、
タイミングを逃したけど、今からでも号泣してみようかな?とか、
7歳の姪っ子の未来を思い描くことで、自分自身は子どもを産むつもりはないこととか、
なんかもう、「女の切なさ」が凝縮されて、読んだ私も意味不明に号泣しそうです。
この本を読んで号泣したくなった女性は、きっと、過去のどこかで「強がっちゃったがために、号泣するタイミングを逃しちゃった経験」があると思います。
あるにちがいない。
私にもあった。
この本を読んでその記憶を思い出した今、元彼に電話して、あの時の「号泣」を取り戻したくなる。
あの時も確かに、
号泣する準備はできていたはずなのに、
強がって涙をこらえてしまった。
感情を爆発させるのを、こらえてしまったんだろう。
こんな気持ちは、墓まで引きずるに違いないから、若い女性に「泣きたいときは泣きわめけ!」とアドバイスしたくなります。
くっそ、余計なことを思い出させてくれる名作じゃないか。
…10ページくらいしかない短編なのに!
さいごに
私は正直江國香織さん、嫌いだったんですよ。
「冷静と情熱のあいだ」とか、他にも数冊読んだけど、気ままに生きて男と流れるようにセックスして、「でも付き合ったりはしない」的なよくわかんないその場セックスの多い、恋多き女性が鼻につくから。
私はモテないので笑
モテモテ女たちの男遍歴を延々と聞かされてる感がうっとうしくて嫌いだったのに。
たまたま本屋の直木賞受賞作品コーナーで見つけてしまって、「アレ?この人も直木賞とってたの?」なんて軽い気持ちで買っちゃった。
そしてやられてしまいました。
江國香織は女の気持ちをお見通しです。
私たち、号泣するタイミングを逃してしまった強がり女たちが、
本当は弱虫で根に持つうじうじだということを、
見事に見抜かれています。
完敗です。
この機に、ほかの江國香織さんの本も読み直してみます。
今まで嫌っててすみませんでした。