太宰治さんの「人間失格」は、太宰さんが完成させた最後の長編小説でした。
そのため太宰さんの「自伝」「遺書」と言われることの多い問題作で、多くの愛書家に好かれています。
取り扱いが難しい作品でもありますが、私は単純に「読みやすさ」と「時代背景を知ることができる」と言う点で好きです。
今回は太宰治さんの「人間失格」を読んだ感想と、簡単なあらすじ(ネタバレしすぎないよう気を付けます)を紹介しますね。太宰さんにはなんとご子孫もいらして活躍されていたので、個人情報出し過ぎない形で血縁についてもちょっと紹介させていただきます。
アマゾンkindleは月額980円(初回30日無料!)で12万冊が読み放題の一番お得と言っていい電子書籍アプリです!下記に紹介する本もほとんどすべて読めるので、買う前のチェックにもおすすめです。
\詳細はこちらから/
漫画もたくさん読み放題だよ♪
「読むのやだ!」ってお子さんにはAmazonオーディブルで読み聞かせがおすすめ!初回無料なので試してみるといいですよ!
私は大人ですが、皿洗いや調理の時にこれで新刊を読んでます。Amazonkindleとタブる提携で、年間数十冊の本が読めて助かっています。「忙しくて本を読む暇がない」という方にものすごくおすすめです!
- 面白さ:
- 読みやすさ:
- 導入の引きこみ:
- 読んだ後の満足感:
- 読むのにかかった時間:40分
人間失格は、遺作?自伝?自殺について
「人間失格」は1948年の3月~5月に書かれ、1か月後の6月に太宰さんから玉川上水に入水自殺をしたことから「遺書・遺作」と考える人も多いようです。
実際に「人間失格」を読めばわかるのですが、「え、これ太宰さんの自伝?だよね?てことは、入水の理由もこれかな?」と思います、普通に。「人間失格」を太宰治の自伝と考える根拠を簡単にまとめてみました。
「人間失格」の主人公・葉蔵 | 作家・太宰治 |
10人以上の兄弟の末っ子 | 11人兄弟の10番目(6男) |
海の近い東北産まれ | 青森県生まれ |
偶然知り合った女性と入水自殺未遂 | 偶然知り合った女性と入水自殺未遂 |
↑自殺ほう助罪でつかまる | ↑自殺ほう助罪でつかまる |
妻の不貞に苦しむ | 妻の不貞に苦しむ |
女にもてる | 女にもてる |
酒と薬で身を崩す | 酒と薬で身を崩す |
↑いかがでしょうか…似てますよね。似すぎているので、自伝とか遺書とか言われるのも無理はありません。主人公の葉蔵は太宰治さんご自身をモチーフにしたのは間違いないでしょう。
ただ、ご本人がなくなられている以上、ファンの間の議論はこの先も答えなきまま続いていくのだろう…という所で、真相は闇の中ですね。
太宰治の【人間失格】内容・簡単にあらすじ
「人間失格」は「はしがき」「第一の手記」「第二の手記」「第三の手記」「あとがき」の5部構成で書かれています。
物語の仕掛け人である堀木という人物による「人間失格」の主人公・葉蔵の3枚の写真の感想がかかれています。幼児期の写真と、学生時代の写真、そして「もう年齢がわからない白髪交じりの」写真です。客観的に見た葉蔵の異様な姿に、堀木は不気味さを感じているっぽいです。
主人公葉蔵は子ども時代から、他人とのコミュニケーションに困難を抱えています。(ASDかADHDともいわれていますが不明です。)そこで思いついたのが「道化」になること。つまり、わざとひょうきんものになり、笑いをとって立場を得るということでした。
女にもて始めた学生時代がかかれています。故郷を出て東京に来て、堀木という友人(はじがきやあとがきの語り手)ができ、一緒にお金を使って飲み歩き、女遊びを覚える時期です。父との別離や深酒の影響で知り合った女性と入水自殺をしますが、生き残ります。自殺ほう助罪で起訴されて刑務所に行き、釈放されます。
身を持ち崩した葉蔵のもとに、故郷から父や兄の部下のヒラメというあだ名の男が送られてきます。ヒラメとの相性が悪く実家の援助を得られず、葉蔵はヒモ生活に陥ります。その後少し改心して結婚するものの、妻の不貞に苦しみ、再び酒と女に溺れて服毒自殺未遂…。周囲から見放されて「人間失格」の烙印を押され、サナトリウムのような病院で廃人として暮らします。
最悪の結末…というか、そもそも何もかもが最悪だったような気がします。何が原因だろうかというと、パッと思いつくのは「葉蔵に無償の愛を注ぐ母・もしくは父がいなかったこと」でしょうかね。感想に詳しく書きますね。
「人間失格」感想
主人公の葉蔵が人間失格なのではなく、葉蔵の周囲の人間が葉蔵を「失格」たらしめているような気もします。けど、太宰治さんの自伝的な小説であれば「そのように読み取ってほしい」というバイアスがあるのかも?と思ったりもしますが、あくまでも個人的感想とご了承くださいね。
母がいない
主人公の葉蔵には母がいません。11人兄弟の10番目の子どもであった葉蔵は伯母や乳母に育てられます。また、東北地方議員の有力な父親の家だったため、下働きの女が多数いたようです。
子どもたちを取り巻く大人たちによって裕福に問題なく育ったかのように見えますが、後に女性によって身を崩していく葉蔵を見ていると、母の愛に触れていないことからの「女性への執着や期待」が過度であると感じられます。理想の母像を求めて生涯を過ごした、と言っても過言ではないかもしれませんね。
酒に弱く心の弱い自分を肯定して受け入れてくれる存在に、常に身をゆだねては期待を裏切られる、もしくは自分から拒絶するという行動を繰り返しています。
父親が厳しく不理解
いやいや、酒と薬と女に溺れて身を持ち崩す…最悪の小説やんwと思ったけど、あとがきの最後の最後にこう書かれています。
「あのひとのお父さんが悪いんですよ」
え?お父さんなんて存在薄すぎでほとんど物語に出てこなかったのに…と思いました。読み直してみると、議員をしている厳格な父親は、幼少期は「東京からのお土産に絵本(葉蔵は別にいらない)を選んで買ってくる」「学生期はつかの間一緒に過ごすけど、仕事を辞めて故郷に帰る」という2か所登場していました。
この父親は葉蔵が問題を起こしたときに「金で解決」「部下をよこして任せる」と言うことをしてくるのだけど、このアプローチも間違っていますよね。社会的には立派な人かもしれないけど、子どもの心に無関心という点で、父親としては失格者です。「父親・失格」と言うわけです。
幼少期の性的虐待
「第一の手記」にサラッと、幼少期の葉蔵が受けた性的虐待について書かれています。
その頃すでに自分は、女中や下男から、悲しいことを教えられ、犯されていました。
この1行でサラッと伏せるように書かれていることで、かえって「これは実際に受けた被害なのでは?」と想像力を掻き立ててきます。だとすると、ひどいことです。
太宰治さんの写真を見てもかなりのイケメン。幼少期と言っても、小中学校の頃から性の対象として相手をさせられていたのだとしたら、このトラウマは生涯苦しむことになるでしょう。
更にこうも書かれています。
そうして、その、誰にも訴えない、自分の孤独の匂いが、多くの女性に、本能によって嗅ぎ当てられ、後年さまざま、自分が付け込まれる誘因の一つになったような気もするのです。
「スゴイもてる感じだ…」とも思えるのですが、本人にとっては良いことじゃなかったみたいです。自分が孤独でイケメンだから、女性たちにつけこまれやすく、そのせいで身を持ち崩すに至ったのだとも読み取れますしね。実際そうだったのでしょう。
女性にもてすぎる
「モテて羨ましい!」じゃなく「モテると大変だなw」と思える珍しい小説が「人間失格」です…。
幼少期には下女たちから性の相手をさせられ、家に押しかけてアピールしてくる女性も多数。学生時代に絶望したとき一緒に心中してくれる女性も簡単に見つかるし。ひものような生活でも許して養ってくれる女性もいるし。すでに酒におぼれて貧困なのに、結婚を迫ってくる女性もいるし。その間もバーのマダムとかにもモテるし。最後に「人間失格」認定を出されて妻に捨てられ精神病棟みたいなところに閉じ込められても尚、世話をする老婆にモテています…。
何なの一体w
ヒラメの説得不足
物語を読んでてイラっと来るのがヒラメの存在です。議員をしている父や兄の部下の男で東京住まい。と言うわけで、故郷からの支援の架け橋になるのだけど、このヒラメが言葉足らずのせいで、主人公の葉蔵は故郷からの支援を受けることができません。
「いや、酒と女でお金を使いまくって、更に支援金出してもらって生きながらえるって何様?」とも思えるのですが、葉蔵には同情すべき点も多く、故郷からの支援がスムーズに行っていればあんな結末にはならなかったのではないかと思います。
妻のヨシ子
1点の希望の星に見えたヨシ子の存在です。純真で人を疑うことを知らないヨシ子と結婚しても尚、身を崩していく葉蔵に、ヨシ子は不貞を働き、更には夫の毒殺も試みます。
まぁ…そりゃそうですよね。襲われているヨシ子を助けもせずに傍観している夫など、見たくないに決まっています。
ただ、物語の中に出てくるツネ子とシゲ子とヨシ子は、いずれも葉蔵にとって「母親像」に近い女性だったに違いありません。
太宰治さんの子孫
太宰はDNAが濃いなあ。
左:太宰治
右上:津島園子 父・太宰治 母・ 津島美知子
右下:太田治子 父・太宰治 母・ 太田静子 pic.twitter.com/cJWKqz08Aa— yamasaci tohru やまちんぬ (@yamachin_nu) April 20, 2020
太宰治さんの「斜陽」のモデルになった静子さんとの間に産まれた太田治子さんは、太宰治さんの娘さんとして有名です。娘さんも作家さんですし、まさに文豪家の血と言えますよね。もう一人、津島園子さんという異母姉妹の方がいらしたのですが、すでに亡くなられています。
人間失格・まとめ
太宰治さんの人間失格は、自伝や遺書と言われています。
深く読み解けば、主人公・葉蔵の不運は全て、両親にあるともいえます。早世して育てていない母。子どもに無関心でお金の力で何事も解決しようとする父。
無償で愛を注いでくれる存在を追い求めて、葉蔵は酒や薬に溺れていき、ついにあの結末を迎えます。
また本を読んだら感想をお届けしますね。ご意見あればコメント欄でお聞かせください。